医療大麻の現状 4 

INDEPENDENT紙より(2000年3月24日付)



「ブレア首相、医療大麻の合法化に同意」アンドリュー・グライス(政治部記者)

「カンナビス、ハッシュ、ドープなど色々な名前で呼ばれてきたマリファナが、
 今後は医薬品として知られるかもしれない」イアン・ブレル(内政記者)

「多発性硬化症患者、政府による臨床試験結果を待つ」ジェレミー・ローレンス(健康部記者)



「ブレア首相、医療大麻の合法化に同意」

政府は大麻の医療目的の使用を合法化する動きにでている。これは従来の対麻薬強硬路線政策にとって重大な転換となる。
大きな問題となっているのは、政府に大麻解禁の検討を迫る閣僚のモー・モウラム氏と、法の緩和に強固に反対しているトニー・ブレア首相及び内務大臣ジャック・ストロー氏との間の妥協である。
両者の間で同意されたのは、多発性硬化症や、激痛を伴う他の症状に苦しむ患者に大麻の合法的使用を許可するという点である。昨年10月に薬物に関する職務を引き継いだモウラム氏は、時代遅れだと批評されている1971年の薬物乱用取締法を見直す委員会を設立するようブレア首相を説得しようと試みたが、失敗に終わった。
もし見直しがなされていれば、個人的使用を目的とする大麻所持の解禁へ道を開いていたであろうが、ブレア首相とストロー氏は緩和政策は、法の見直しは若者のソフト・ドラッグ使用を助長させ、さらにハード・ドラッグに手を出すきっかけになると主張し、見直しを拒絶したのである。
しかし昨日インディペンデント紙が政府高官筋から得た情報によると、モウラム氏は治療目的の大麻使用合法化を勝ち取るであろうとの事である。内務省筋が言うには、「これはかけひきだ。モウラム氏は医療的使用のOKは取るだろうが、他には何も取れないだろう。」
最終的なゴーサインは、大麻の医療的効果を証明する臨床試験後に出される。ロンドン大学におけるネズミを使った実験では、大麻が多発性硬化症の痛みを伴う幾つかの症状を和らげ、筋肉痛や震顫を防ぐ事が発見された。
イギリス医師会と上院特別委員会は臨床試験を支持しており、来週火曜日に警察当局によって発表される1971年の薬物乱用取締法についての2年に及ぶ調査結果も、治療目的使用のための法緩和への更なるプレッシャーとなる可能性がある。
内務省内で半官半民の地位にある独立調査会は、個人的使用目的での大麻所持で国民がこれ以上拘置されない事と、ヘロインと並ぶA級麻薬からエクスタシーを格下げする事を勧奨することになるだろう。
首相と内務大臣はこれら2提案を支持しそうもないと考えられている。側近によると、麻薬の脅威に対するブレア首相の態度は、最近のダウニング街での警察長官との会見後、更に強まったという。「彼は麻薬が子供達を脅かすのを見て、自分自身の子供の事を考えている」とある側近は言った。閣僚達によれば、医療的使用のための法緩和がどのような形をとるかは、まだ定かではないということである。意見の中には、患者名を挙げる事を条件に医者に大麻の処方を許可する方法や、医者の書面による同意のある患者に個人的使用を限定とした大麻の栽培あるいは購入を許可する方法などがある。
昨日4人の労働党下院議員が、大麻の治療的使用を許可する事、臨床試験を速める事、そしてMS患者、エイズ患者、関節炎患者や激痛緩和のために大麻の使用を医者に容認された人々を起訴しないよう警察に命じる事を主張する下院動議を上程した。
患者達は「町で非合法の麻薬を買わされたり、病人や死にかけている人を起訴して麻薬戦争の前線に置くようなことはお断りだ」と話している。
この下院議員達は、大麻の有効成分を使ったカナビノイドという薬物が開発されるまで、人々に大麻そのものを使用する許可を求めている。
しかしイギリス医師会は大麻そのものの使用に対して疑いを抱いている。何故ならその特質の内に有害なものをも含んでいるからである。タールのレベルはタバコの3倍であり、新研究は大麻タバコ4本吸う事は煙草を20本吸う事と同じ位肺にダメージを与えると示唆している。
医療的使用を許可する動きは、ブレア首相の頑強な緩和反対にもかかわらず、大麻解禁運動家達にとってはゴールに一歩近づいたものと見なされるだろう。
70年代、学生だった頃にマリファナを吸った事を先月認めたモウラム氏は、政府の反麻薬調整者であるキース・ヘラウェル氏がヘロインやコカイン等ハード・ドラッグとの戦いに努力を集中するよう警察へ呼びかける事を支持した。彼女の発言はダウニング街と内務省の両方で不評を買ったということであるが。



「カンナビス、ハッシュ、ドープなど色々な名前で呼ばれてきたマリファナが、今後は医薬品として知られるかもしれない」

1622年に船の帆とロープの製造のため大麻生産を命じられたアメリカ植民地の開拓者にとって、非常に適応性のある大麻という植物の解禁をめぐって現在展開されている論争は理解しがたいことだろう。
ローマ人は、大麻を枕もとの火鉢で燃やして分娩中の女性の苦痛を和らげたように、1500年も前に大麻の医療的性質に気づいていた。しかし、大麻の有害成分への恐れが1925年に危険薬物取締法を生んでから、過去75年間、イギリスではこの多方面に渡り幅広い用途をもつ大麻という植物を所有することは刑事的犯罪とされてきた。
以後、大麻の危険性とその治療的、社会的、合理的な性質をめぐる論争は、内閣を分裂させる程イギリス社会を対立させた。現内務大臣のジャック・ストロー氏が大麻不法所持で自分の息子を警察へ連れて行く覚悟をした一方で、閣僚のモー・モーラム氏は過去に大麻を喫煙した事を認めた。
そもそもイギリスの大麻禁止法は、「殺人、狂気、死が潜む強烈な麻薬」をばら撒く売人に対する警告のチラシが配布されたアメリカにおけるマリファナ喫煙反対の動きに引き続くような形で制定された。しかし60年代になると、大麻の喫煙は若者文化出現の鍵となりはじめた。ロック・フェスティバルでは、通称、ドープ、ブロウ、リーファー、スプリッフ、ウィードなどとさまざまな名前で呼ばれる大麻がはばかることなく喫煙され、警察官が擁護しようとつとめてきた法に対する挑戦のシンボルとなった。
30年以上にわたり激論が交わされている大麻解禁の論争の引き金となったのは、1967年のミック・ジャガーの薬物所持による逮捕と懲役3ヶ月の刑である(その後高額な罰金刑に代えられた)。大麻喫煙容疑をかけられていた彼は、別件の船酔い薬4錠を所持していた事で逮捕され、起訴された。このミック・ジャガーを、捕まって当然な犯罪者と見る向きもあった。
しかし当時のタイムズ紙編集者ウィリアム・リーズモッグ氏は、この刑罰は「蝶を車輪で砕きたいという原始的衝動」と社説で説いた。
その後リーズモッグ氏は、著名人50名が署名した大麻解禁を呼びかける1ページ広告を出した。「…所持は許可されるか、最大でも10ポンド以下の罰金刑の軽犯罪と見なされるべきである」との主張だった。
2年後、政府が設立した顧問団体は何者も大麻所持で投獄されるべきでないと結論し、刑罰の軽減を呼びかけた。しかし労働党内務大臣ジェームス・キャラハン氏はこれを拒否した。1971年の薬物乱用取締法は既存の法を強化するものであったが、所持と供給の間によりはっきりと区別をつけ、売人に対する刑を重くする一方、使用者の罪は軽減された。
サッチャー首相とメージャー首相在任中は、ダンス・ミュージックの流行によってイギリスの若者の間で薬物使用が最高潮に達し、それに刺激された大衆とマスコミのパニックと政治的抵抗が同時に発生した。
「Big Deal: The Politics of the Illicit Drugs Business」の著者であるティム・マリヨン氏は、「麻薬戦争が文化的事件となり始め、大麻解禁に関する如何なる議論も禁じられた」と言った。しかし犯罪裁判制度が非合法薬物裁判の要求への応対に奮闘するにつれ(大麻所持による起訴の件数は1985年には18,213件だったが1995年には68,598件と増大した)、別の解決法を模索する人々も現れ始めた。
1997年、インディペンデント・オン・サンデー紙は大麻解禁を呼びかけるキャンペーンを開始し、1998年11月に上院科学技術委員会は、多発性硬化症、関節炎やその他症状に苦しむ患者の苦痛を和らげる大麻の医療的効用が明確になった事を踏まえ、医者に大麻処方を許可すべきだと勧告した。上院委員会のこの結論は、大麻の医療的効用が研究できるよう法律を変えるべきだというイギリス医師会の1997年の勧告に基づくものであった。
昨年12月、医学リサーチ会議の後援による研究が開始した。民間企業のGW製薬も同様のプロジェクトに着手している。
ブレア首相と強硬路線派の内務大臣はより柔軟な態度への呼びかけを未だに拒否している。最近の労働党議会で、ブレア首相はこれを「今までの政府が長い間責任逃れをしてきた」問題と呼び、麻薬に対する厳重な取締りを発表した。首相は「自分の子供達を考え、麻薬について非常に憂慮している」と述べた。先月ブレア首相は「全ての段階の麻薬の脅威」と戦うことを下院で約束した。
2年前、政府はキース・ヘラウェル氏を反麻薬調整者に任命した。彼は大麻解禁論には慎重に一線を引きつつ、増加しているヘロインやコカイン等、より危険な薬物使用への取締り強化に予算を集中させる一方で、大麻に対してはもっと寛容に扱われるべきだとの結論を出した。
しかし、ヘラウェル氏の立場は、政府の麻薬政策は効果的であるとする証拠を集めるというものだったため、閣僚達は彼の発言に不満を抱き、かわってモウラム女史に麻薬政策を管掌する役目が与えられた。しかしながら、内閣執行者としての彼女も大麻に対しては温和な見方をしている。解禁支持者ではないが、彼女は「分別のある改革」を支持すると考えられている。彼女の母ティナは最近慢性疾患を患い、実際には大麻を使ったことはないものの、家族はその医療的使用を支持しているといわれている。
裁判官と陪審員も苦痛軽減のための使用そのものだけではなく、患者による自家栽培にも同情的になってきている。先週、トマス・イェーツ氏は、自宅で大麻40本を栽培しているところを警察に発見されたが、陪審員によって釈放された。多発性硬化症患者のイェーツ氏は不快な副作用を伴わず苦痛を軽減するのは大麻だけだと法廷で述べた。
全国薬物情報グループ・リリース(Release)が1967年に設立されてから、100万人が大麻違反で起訴された。リリースのスポークスマンであるマイク・グッドマンは「医療及び特例的な大麻の使用に関する問題は熟し、ごく未来にこの分野に変化がある事は間違いない。社会的な使用に関する変化の見通しはまだつかないが、この問題についての対話はより明確で建設的になってきている」と話している。



「多発性硬化症患者、政府による臨床試験結果を待つ」

何十年にもわたって、大麻の医療効果は、医者には知られていた。イギリスでは30年以上にわたり、大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)を使った2種類の薬品が、化学療法を受けるガン患者の嘔吐を抑えるために使用されてきた。新薬が登場し、大麻製剤の使用頻度が下がったにもかかわらず、使用されてきたのである。
ほかの病気への大麻使用にも関心が高まってきている。イギリス医師会科学会議の1997年度報告書「大麻の医療使用について」は、大麻が多発性硬化症患者の痙攣を軽減するという根拠があると結論づけている。又、限定的ではあるが、癲癇、緑内障、喘息、高血圧、エイズに伴う体重減少などにも効果があるとの証拠も挙げている。
イギリス医師会は、タバコと同じ程度の危険性があるかもしれないとして大麻の全体的使用を提唱している訳ではない事を強調しつつも、医療的理由で使用している人々に対して、裁判所が温情を示すよう要求した。
大麻研究の目的は、大麻のどの成分に効果があるのかを明確にするため、阿片からモルヒネを精製したのと同様に、大麻から有効成分を抽出する事である。大麻に含まれる400種の化学物質の内、精神に作用する物質が少なくとも60種ある。
昨年、患者を対象にした2つの臨床試験計画が公表された。ひとつは医学研究会議で、100万ポンドの予算をかけて、多発性硬化症患者660人に対する効果を研究する。
もうひとつはGW製薬会社によるもので、多発性硬化症、脊髄損傷や治療困難の苦痛に苦しむ患者ら2000人を対象にした臨床試験が、今年から始まる予定である。

医療大麻を考える 翻訳 HPより転載